エンジンの点火時期は何の為に管理されるのか?
それはエンジンの効率を最大限に引き出すためです。
点火時期の点検の要否判断は色々ありますが、相談例からの共通点を挙げると「燃費が悪い」「坂道を登る際のトルクが細くなった」「エンジンの始動性が悪くなった気がする」というのがあります。
総じて言えば「エンジンの効率が低下した」ということです。
何故、点火時期がずれると効率が下がるの?という理由はやはり内燃機のお話における「ものすごく話が長くなる」定番の1つです。
幸いにも人間が体感的に理解しやすい例のひとつが、自転車です。
自転車と車の共通点はいくつかありますが、そこから特に自転車とエンジンの共通点に着目するとクランクが挙げられます。
(クランクが無い内燃機も存在しますがそこは置いておきます)
みなさんは自転車を(最大限に速く)漕ぐときには、ペダルが一番上の位置から一番下の位置までの180°の間を思いっきり漕ぎますよね?
エンジンも同様で、燃やされたガソリンがピストンを通してクランクを思いっきり漕ぎます。
その時に点火時期が遅い(最適でない)と180°が綺麗に押されず、160°しか押されないという状況になります。
ということは、その差の20°の間が無駄になり、これがそのままエンジンの出力低下という事になります。
この例えでは点火時期が早ければパワーが出るという事になりますが、点火時期を早めすぎると「ノッキング」という現象が起こります。
よく自動車を運転する人たちの間では、エンジンの回転数が下がり過ぎて振動が出たり止まりそうな状態をノッキングと言うケースがありますが、それは誤用です。
ノッキングの正確な説明は省きますが、ガソリンエンジンをずっとノッキングさせると最後には「エンジンが壊れる!!」ということです。
しかも、オーバーホール不可能なほどにエンジンを破壊する場合もあります。
ノッキングを再び自転車で例えると左右の足が同時にペダルを押す状態であり、クランクが止まるか人間がペダルの上に立つ状態です。
エンジンに同様のことを起こすと、ピストン同士がクランクを逆回転させようとするのでガソリンを燃やす部屋が異常圧力で破壊、もしくはクランクシャフトが折れます。
(ディーゼルエンジンはわざとノッキングさせてるので大丈夫ですが)
現在の電子燃料噴射制御(ECU)の車両は基本的にはノッキングを回避するように設計・実装されているので、よほどの事がない限りは心配はありません。
近年はエンジンの点火時期を測定する工具もラインナップが縮小しており、エンジン診断コンピュータから点火時期の確認ができてしまいますが、その点火時期が本当に正しいのか?という点検は必要です。
クラシックカー以外においても点火時期の定期点検はお忘れなく。