自動車整備士のカリキュラムの中で「キャブレターは現在用いられていない」と改定されてから約10年が経過しています。
たしかに現行生産車両ではキャブレターは二輪車からも絶滅しましたが、いまでも私の身の回りはキャブレターでいっぱいです。
今回はそんなキャブレターのお話です。
細かな整備やセッティングのお話をすると途轍もない文章量になるのでそれは別の機会にするとして、今回このような文章を書こうと思ったのに理由があります。
自分の遭遇した事例で「キャブレターのセットアップガイドに従っていない」としか思えない車両がかなり多いからです。
セットアップガイドに従っていない手順が、正規の手順を合理化した結果として行われるならば問題は起きません。
しかし、人から見聞きしたり教わって伝わる中で「合理化された手順」だけが「なぜそうなったのか」を理解されずに伝搬しまったのでしょう。
結果として「ただ闇雲にいじった」車両が見受けられます。
SUツインキャブを例として挙げると「左右の作動を見た目で合わせているのに綺麗にエンジンが回らない」という話が多いです。
それは調整済のエンジンとキャブの場合、調整の結果として左右の作動が揃うだけです。
4気筒あってそれなりの走行距離を重ねたエンジンであれば、それぞれの気筒間で燃焼状況が異なる可能性はいくらでもあり、実際バラついているエンジンはいます。
そのエンジンに対してキャブの作動を見た目で調整したら、シリンダー間での出力がバラついて不調になるのは当たり前です。
それに対して、バイクのほうはケイヒンやミクニのキャブレターが多いのでセットアップガイドも豊富ですし、車種専用セットがあるおかげで問題が起こりづらいようです。
キャブの調整をいくらやっても毎回調子が変わってしまう場合などは一度、各キャブのセットアップ手順に従って仕切り直してみてください。
ほとんどの場合「あれ?とりあえず走れる感じだぞ」という所まで戻れます。
そこから必要となる「あと一手」は経験やデータ、もしくは時間と根気が必要な領域です。
キャブの車両なんて良くないからインジェクションの車両を乗るように促されたという話をお客様から聞いたこともある世の中ですが、キャブもまだまだ楽しめたらと思います。